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2020-04-19

父との時間(3)

わたしは父に似ているところが多い。すぐ人に話しかけるクセも父譲りだ。

父は、横断歩道で信号待ちのとき隣に居合わせた人が傘をもっていると「あれ、今日雨降るって言ってた?」
空港のエレベーターに乗り込むやいなや、中にいた人に「駐車場何階だっけ?」
”あのー”とか、”すみません”などの前置きは一切なし。まるで家族や友達に話しかけるように、見ず知らずの人に話しかける。

そういう彼の気構えの無さが伝わるのか、話しかけられた人もごく自然に「夕方から降るみたいですよ」とか、「あ、駐車場は5階です」とか皆さん親切に答えてくれる。それは、不思議なほどだ。父は小さな子どもも大好きで、赤ちゃんを見ると近づいていって「かわいいねえ」と言わずにはいられない。昔はいまよりもいろんなことが大らかで、お母さんが赤ちゃんを見ず知らずの父に抱かせてくれることもよくあった。わたしは赤ちゃんを抱いた嬉しそうな父を見るのがけっこう好きだった。

こんなふうに書くと、父は穏やかで優しいお父さんのように思われるかもしれない。いや、優しいところもたくさんあるけれど、穏やかでは、ない(笑)。とにかく血の気が多くて、その血が一瞬で沸騰する。

わたしたち子どもが小さい頃、よく家族でドライブに行った。どこだったか、1車線の細い山道を上っていたら、うしろの車がわたしたちを追い抜いた。後部座席に子ども3人を乗せたボロいファミリーカーはスピードも出ないから抜きたくなるのもあたりまえ。たぶん良いタイミングで安全に追い抜いただけなのに、追い抜かれたことにムッとした父は、その車を抜き返して前に横付けし、車を降りて運転手を怒鳴りつけた。体の大きな屈強な父は、サングラスをしているとほぼヤクザ(笑)。いきなり怒鳴りつけられた人はきっと震え上がったに違いない。今だったらドライブレコーダーに録画されてニュースに出ていたことだろう。車に残されたわたしたちは、「ああ、またはじまった。本当に勘弁してよ……」という感じ。相手が悪いわけではないのに、自分の気に食わなければ怒り出すという、そんな困った性格の人だった。

そんな理不尽なところもあるけれど、基本的には正義感の強い人。サラリーマン時代には電車で痴漢をつかまえたり、お年寄りに席を譲らない若者をどやしつけて立たせたり、もっと大昔に遡れば、いじめっこを羽交い締めにしていじめられっこに好きなだけ仕返しさせたり(笑)。小学校時代の親友のEさんも、「マサヒロくんはいつも弱い子を守ってたよ」と話してくれたことがある。自分が腕力があったぶん、優しいところもきちんと持ち合わせている人だった。

わたしが幼いころ、電車のホームで白い杖を持った方が点字ブロックを頼りに歩いていると、父は決まって何も言わずにその方の線路側を手を広げて横歩きし、間違っても線路に落ちないように守っていた。その父の姿を、わたしはいまもアリアリと思い出すことができる。

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