泣きっ面に蜂
あまりにひどい状態で家族にさえ見せたくなかったわたしの顔が、もっとひどい状態になったことがありました。ただでさえ悲惨なアトピーの顔に、ヘルベスを発症したのです。
あるとき、なぜか顔にブツブツとへんなできものができ、なんだろう…?と思っているうちに、膿のようなものが顔中を覆い、その膿が固まって黄色とも緑ともいえないような色になり、わたしの顔は一面黄緑の膿でデコボコになりました。その頃わたしはステロイド剤の薬を使うことをやめていて、そんな状態になってまで薬を使うことを拒否しました。今思うと、あまりに体を痛めつけられていたので、ものすごく頑なになっていたのだと思います。とにかく、皮膚に出た症状には自動的にステロイド剤を出す先生のところに行きたくないと思っていました。すると、またまた頼りになるアネが、柔軟な考えを持っている女医さんがやっている皮膚科クリニックを見つけて連れて行ってくれました。
その日、アネは仕事から急いで帰ってきてわたしを車に乗せ、わたしたちは診療時間終了ギリギリにクリニックに着きました。それまでしばらくの間外に一歩も出ていなかったわたしは、肌になるべく負担にならない服をどうにか着て、久しぶりに外に出ました。その日は雨が降っていて、すでに日も落ちて外は暗かったのですが、それでも異常な様相の自分の顔を人目にさらすことが耐えられなくて、駐車場からすぐそこのクリニックまで人混みの中を歩くことさえ、わたしにとってはとてつもなく苦痛でした。そうわたしが言うと、アネはレインジャケットをわたしの頭にパサっとかぶせてくれました。あのときのジャケットは、わたしにとって、何よりものバリアであり、鎧でした。そうしてわたしはやっとのことで外を歩くことができたのです。アネはそんなふうに、その場で解決策を編み出すのが上手な人。本当にありがたいことです。
どんなに見かけがひどくても、他人はあなたの顔なんて見ていない。自意識過剰じゃないの?と思われると思います。そのとおりです。でも、人が見ている、見ていないにかかわらず、黄緑のガマガエルのようになった自分のこの顔を外に出す、ということが、言いようもなく苦しかったのです。あなたの顔がどんなにひどくても、そこまで苦しむことじゃないでしょう……と、いまのわたしなら思えます。でも、当事者にしかわからない、固有の心情というものがあり、そこにはどんな理屈もフィットしない、ということは皆さんもご存知だと思います。
あのときのわたしは、自分が自分ではなくなっていくという恐ろしさに日々苛まれていました。できることならば消えていなくなりたい。でも、それもできない。痛み、かゆみに加えて、今度はヘルペスで顔じゅう膿だらけ……。不安と恐怖は、まだまだ続きます。
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