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2019-03-05

なぜわたしがアトピーに……?

わたしがアトピー性皮膚炎を突然発症したのは、29歳7ヵ月のときでした。

なぜそんなに正確に覚えているかというと、ゴールデンウィークあたりに長かった髪をバッサリとショートにして少したったころ、「あれ、なんだかまぶたがかゆいな……」と思ううちにどんどんひどくなり、30歳の誕生日を悲しい思いで迎えたことが印象に残っているからです。

わたしはもともと皮膚が弱い体質で、これは父譲りだと思います。父は消毒のアルコール綿でもかぶれてしまうほど肌が敏感。わたしはそれほどではないものの、小さなころ習っていたバレエの発表会でお化粧をすると、そのあと肌が荒れて、海苔みたいにバリバリになったことを覚えています。
兄弟みんな敏感肌。わたしもごく幼いころはアトピーの症状があったようですが、ものごころつくころにはすっかり消えてしまったので、自分ではかゆかったなどの記憶はまるでありません。
 
以来、ほとんど肌の弱さを感じることなく過ごし、高校生のときもニキビひとつできず、肌トラブルとは無縁の生活を送っていました。そんなわたしが、30歳直前にものすごくひどいアトピーを発症、その急激さは”爆発”という言葉がぴったりでした。
 
原因は、なんだったのでしょう……。いまでも、はっきり「これ」と言えるわけではありません。
でも、間違いないのは、わたしの生活習慣がひどかったこと。自分でも気づかない間に体が着々とアトピー発症に向かって進んでいたのだと思います。
体はきっと少しずつ声を出していたのだけれど、わたしはまったく聞く耳を持たず、若いからといって無理をし、油断していた。そしてかわいそうなわたしの体は、ついにアトピー発症という悲鳴をあげたのです。
 
では、それまでわたしがどんな生活をしていたのかというと、ほぼ毎晩遅くまで仕事をしていました。それから家に帰ってお風呂に入り、寝るのはいつも深夜です。朝は睡眠不足でだるい体を無理やり起こし、朝ごはんも食べずに会社に急ぎます。お昼ごはんは、ほとんどコンビニエンスストアで買うか、近くで外食。夜も、そのときどきで、仕事の合間に会社の近くで食べるか、あるいは仕事が終わってから夜遅くに食べるか、していました。
食べるといっても、栄養バランスなんていう概念からはほど遠い食事です。カロリーはじゅうぶんですが、ビタミンやミネラルはまったく不足していましたし、たんぱく質も良質なものをじゅうぶんに摂れていたとは思えません。そして運動も、週に一度、2時間ほどフラメンコを習っていたくらいです。
 
一見、仕事をしている20代女子のありきたりの生活のようですが、たぶんわたしの体には、ほんとうにきつかったのだと思います。つねに体が冷えていましたし、肩こりもひどく、血行がとても悪かったと思います。
時間の使い方も下手で、リラックスしたり体のケアをする時間を捻出することもできず、ほんとうに体はギリギリの綱渡りをしていたのでしょう。そしてついに、わたしの体はアトピーというおそろしい手段を使って、「どうにかしてよ。このままじゃもっとひどいことになるよ」と訴えてきたのです。
 
誰しも、体調が悪くなるとまず弱いところに症状が出てきます。
わたしの場合、それが肌でした。もしもほかの内臓が弱ければ、きっとそこに症状が出てきたのだと思います。
肌は再生が早いですし、命には関わらない、替えのきかない内臓が悪くなるよりはまだいい、という声もありましたが、見た目がひどくダメージを受けたり、かゆみと痛みでまったく眠れなかったり、外出もままならなくなったりするという点で、わたしはまるでそんなふうには思えませんでした。外からは見えない病気だったらどんなにいいだろう……と、どれほど思ったかわかりません。アトピーと日々闘っていたときは、体だけじゃなく、心までこれほど痛めつけられる、こんなにひどい病気ってあるだろうか……と思っていました。
 
わたしはアトピー以外の深刻な病気になったことがないので、ほかの病気のことはわかりません。
そして、もちろん、その病気になった人にしかわからないつらさというものが、どの病気にもあると思います。ですが、アトピーのつらさだったら、わたしは、どんなものでもすべてを味わったと、言えると思います。つぎの1分をどうやってやり過ごすかを考えながら、毎秒毎秒ひたすら耐えてようやく息をしていたあのころ……。
 
原因ははっきりとわからないし、そしてわたしもこのことをなかなか認められなかったけれど、やっぱり自分で自分の体をアトピーにしてしまったと、いまは思っています。
でも、アトピーはほんとうにつらい病気ですが、どんどん生まれ変わる肌を少しずつ強く良い肌にしていけば、必ずよくなるというのが救いです。
いままさに苦しんでいる方には、到底信じられないことかもしれませんが、わたしも自分の症状がビクとも動かないときはそんなこと信じられませんでしたが、でも、ほんとうのことなんです。
肌は、細胞は毎日生まれ変わっている。
それは真実なので、きっとよくなるということをどうか信じて……。
 
だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ。
 
 
Photo courtesy : Jim Lafferty
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