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2019-09-03

ワーキングウーマンへの憧れ

闘病中、自分の部屋でテレビを見ていると、ニュースなどで東京駅丸の内口の前の横断歩道を足早に渡っていくビジネスマンやビジネスウーマンが映ります。わたしはあの人たちがうらやましくてしかたありませんでした。あそこを歩いているということは、朝起きて、かっこいいスーツを着て、女性だったらヒールのあるパンプスを履いて、その上満員電車に揺られ、丸の内にあるオフィスに向かうという、その体力があるということです。もちろん社会人としての確固たるポジションもうらやましいですが、いま書いたようなことができる、ふつうの人はさほど驚かないふつうのレベルの“健康”と“体力”が、わたしにはすごく特別なものに思え、いつも羨望と憧れの目で画面に見入っていました。もちろんビジネスマン、ビジネスウーマンにもいろいろとたいへんなことがあると思います。彼らがどんな気持ちで日々仕事をしているかはわからないものの、その姿は、わたしにはほんとうにキラキラと輝いて見えました。

毎朝満員電車に揺られて通勤できるような体になることは、あまりに当時の自分とかけ離れていて願うべくもありませんでしたが、わたしはただただ、外に出られるようになること、もっと言えば、カフェでお茶を飲むという小さな夢を抱いていました。

カフェでお茶を飲む、ということは、わたしにとって元気であることの象徴だったのだと思います。“お茶”と書いてはいますが、わたしの言う”お茶”とはコーヒーのこと。わたしはとにかくコーヒーが大好きで、心地よい場所でおいしいコーヒーを飲んでいるとき、このうえない幸せを感じるのです。カフェでおいしいコーヒーを飲んでいる自分を想像すること……、それがわたしにできる精一杯でした。それ以上のことはできなくていい、それができるくらい元気になれたら何もいらない……、そう思っていました。

あのときのわたしには、外でコーヒーを飲むほど元気になることは奇跡のように感じられましたが、元気になってしばらく年月がたつと、今度はあれほど病んでいたことが、悪い夢でも見ていたかのように感じられます。

いいことも悪いことも、過ぎてしまうとそのときの喜びや苦しみという感情は薄れていくものです。健康になればなったで、今度は違う悩みが押し寄せてきます。それはそれでたいへんですが、アトピーの苦しみを乗り越え元気になれたということがどれほどありがたいことか……、日常に追われてつい忘れがちになってしまいますが、そのことをいつも胸に置いて、元気でいられることの尊さ、ありがたさを忘れずに、生きていかなければと思います。

いま、アトピーで苦しんでいる方も、元気になった自分なんて想像することもできないと思っている方も、どうか夢を持つことをやめないでください。アトピーが治ったわたしも、日々違うことで悩んでいます。アトピーはめちゃくちゃ苦しいけれど、きっと人は生きているかぎり、多かれ少なかれ悩みを背負っていくものなんだと思います。死ぬほどつらいけれど、あなたはけっして一人じゃない。それだけは忘れずに、どうか気持ちを強くもっていてください。わたしもまだまだですが、どうにかがんばって生きていきます。生きているかぎり、きっと楽しいこともある。無理せず、リラックスしながら、一緒にゆっくりいきましょう。

 

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