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2019-11-04

生きていることに耐える

最悪の状態とき、わたしはいつも「つぎの1分をどうやってやり過ごそう」と考えていました。毎秒毎秒つらいので、わたしにとって1分はとても長いものなのです。ですからほんとうは、「つぎの1秒をどうやってやり過ごそう」です。

つぎの1分を生き延びるための心がほしい、つぎの1分をしのげるだけの勇気がほしい。そう切実に願いながら、わたしは毎日を過ごしていました。

たとえば、あと少し速く走れるように、とか、あと10回腹筋運動をするとか、あと1キロ多く走ろう、とか、そういうプラスの努力には、自分が強くなったり、よりよくなるだろうという明るい未来が予測できるから、がんばれるんだと思います。

でも、いつ治るか、いつ解放されるかわからないアトピーの苦しみに耐えるという努力は、どんなにがんばっていてもちっとも良い方向に向かっている実感がなく、逆にマイナスになっているような気がして、それがとても苦しいのです。ひたすらじっと座っていることが、わたしにとってはものすごい努力と忍耐を要することなのですが、その先に何かいいことがあるという予感はまったくしません。希望が持てないというそのことが、何よりも一番つらかった。

希望がどこにあるかもわからない。どこを探していいのかもわからない。そもそもそんなものが存在するのかどうかさえわからない……。わたしは、本当にどうしていいかわからずに、ひたすら生きていることに耐えていたのです。

 

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